屍病
「あぁ? 何だテメェ! んなもん向けやがって! 状況がわかってねぇのか!? 俺がちょっと力を入れたら、こいつの肋骨くらい簡単に折れんだぜ!?」


真倫ちゃんの腹部に乗せた足を、胸の辺りに移動させる山中。


そして、グッと力を入れると、真倫ちゃんのうめき声が漏れた。


「ゆ、雄大! 真倫ちゃんがやられちゃう! 真倫ちゃんを助けて!」


私がそう言っても、雄大は首を横に振って。


「今、ここでこいつらをどうにかしないと、今度は俺達が殺されてしまう! こいつらは邪悪だ。イーターよりもずっとずっとな!」


身体を震わせながら、包丁をギュッと握り締める。


「はっ! 俺達が悪なら、お前らは正義だってのか? 自分達が生きるためなら、コンビニで万引きしても、化け物を殺しても許されるのが正義かよ? で、その包丁で俺を刺しても正義だって言うんだろ? 仲間を見捨てても正義ってわけだ!」


そう言われると……何も反論できない。


確かに生きるために食糧調達をしているし、イーターだって元は人間なわけで。


それに、山中は真倫ちゃんを人質に取っているけれど、きっと雄大が包丁で刺しに行っても返り討ちにする自信があるのだろう。


だから余裕を見せているんだ。


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