屍病
こんなことをしている場合じゃないのに。


これ以上イーター達が集まらないように、電気を消さなきゃならないし、学校の中に入って来ないように守りを固めないといけないのに。


「ひとつ。お前は大きな間違いをしている。俺が包丁を向けているのは、お前を刺すためじゃない。そして、山瀬を見捨てるつもりもない」


「あぁ? 頭おかしくなったか? 何を言って……」


そう、山中が雄大に尋ねていた時だった。


胸に足を乗せられていた真倫ちゃんが、山中の足首を掴み、足を振り上げたのだ。


真倫ちゃんの足は、山中の股の下に差し込まれるように入って。


勢いよく、足が山中の股間に直撃したのだ。


「!?」


何が起こったのかわからない様子の山中。


でも、反射的に股間に手を当て、声にならない声を出した。


「ふぅ……人質に取った人が悪かったな。山瀬は空手2段だ。女子と思って油断したんじゃないのか?」


男子は股間を蹴られると地獄の苦しみだって言うけど、私にはその苦しみはわからない。


でも、山中のあの悶え方を見ていると……とんでもなく苦しいのがわかるよ。


「お、お前……ふ、ふざけ……」


よろめいて、山中は窓枠に身を預けるようにもたれた。


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