屍病
膝が震えて動けずにいると、本殿の方から人の足音が聞こえた。


神事のために中に入っていた人達が、この騒ぎで出てきたに違いない。


「お、おじいちゃん!! あの怪物達を何とかして! 警察でもなんでもいいから、早く……」


高下さんのおじいちゃんがその中にいたのだろう。


石段を見上げて、怪物達を指差しながら高下さんが叫んだけれど。


本殿から出てきた人達も、灰色の肌に大きく裂けた牙だらけの口で、ニタリと笑って私達を見ていたのだ。


「お、おじいちゃん……」


「ダ、ダメだ……おい! 早く逃げるぞ! ここにいたら、あの二人みたいになっちまう!!」


桐山くんの声で、震える脚を何とか動かして。


私がさっきまで泣いていた場所の方へと、皆で走り出した。


鳥居の方は怪物で溢れているし、逃げるにはその道を通るしかないのだろうから。


いじめられているとかいじめているとか、この時ばかりは関係がなかった。


灰色の人達に捕まれば、食べられてしまうのだから。


私達は神社を抜け、路地を通り、ただ神社から逃げようと必死に走った。


悪い夢なら、早く覚めてと願いながら。
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