屍病
まるでスローモーションのように、窓から落下する山中が見える。


下には、赤ちゃんの遺体を貪るイーター達。


醜悪な笑みを浮かべて、落下する山中に気付いたのか、嬉しそうに口を開けて手を伸ばしていた。


イーター達の手に迎えられるように、山中が落下した。


まるで山中を受け止めるようにして、イーター達が優しく包み込む。


でもそれは、助けるためじゃない。


頭部を地面に打ち付けて死んでいれば良かったと思うほどに残酷な、生きたまま食うためだった。


そしてゆっくりに感じた時間が、急に早く流れ出す。


イーター達の手が、口が、次々と山中を襲う。







「やめ、やめろおおおおおお! あああああああっ!! 痛てぇ! 痛てぇよ! 誰か助け……助けてくれ! ぎゃあああああああああああああっ!!」






服ごと、皮膚が裂かれ、腹部から大量の出血と飛び散る内臓。


腕や脚はねじ切られ、眼球をほじり出されて……。


耳や鼻といった部分は真っ先になくなっていた。


「うっ! こ、これは……見るな! 見るんじゃない!」


慌てて雄大が私の目を塞いだけれど、あの死の恐怖と絶望に満ちた山中の顔は……忘れる事が出来ないだろう。
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