屍病
「ま、待って。私も行く。一階は危険だから、雄大と手分けした方がいいよね?」


いつもの私なら、こういう時には震えて動けなかっただろう。


誰かがやってくれるからと、私はその結果を待つだけだった。


「芹川……よし、わかった。じゃあ芹川も一緒に来てくれ。三人で電気を消しに行くぞ」


雄大に、ポンと肩を叩かれて、私は床に置いていたフライパンを手に取った。


「あ、愛莉……」


そんな私を、真倫ちゃんが心配そうに見るけれど、何もイーターと戦いに行くわけじゃない。


万が一そうなる可能性があったとしても、私だけ戦わない理由にはならないから。


「大丈夫だよ真倫ちゃん。すぐに戻って来るから」


怖くないわけがない。


本当は逃げ出したいくらいに怖いけれど、何もしなければ他の誰かが死ぬ可能性だってあるのだから。


「じゃあ行こうぜ。かなり時間を食ったから、やるなら早く終わらせよう」


桐山に頷いて、私達は廊下に出た。


外の騒がしさとは打って変わって、校舎の中は静かで暗い。


「……最悪の場合、学校を放棄することも考えた方がいいな。この数だ、一斉に責められた場合、とても守りきれるとは思えない」


階段に向かって走っている途中で、雄大がボソッと呟いた。
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