屍病
「あぁ? 音楽室の扉でもダメだってのか?」


「いや、あの扉はそう簡単に破られる物じゃないけど……音楽室は廊下の端の部屋だ。追い詰められれば逃げ場はない。籠城するにはいいが、そんな状態で食糧がいつまで持つか」


ただでさえ、山中と風雪に食い散らかされたから、ろくに食糧が残ってないんだよね。


「なんだよ……じゃあ音楽室はダメじゃねぇか!」


「こんな数のイーターを想定してなかったんだよ! まさか、こんなことになるなんて。くそっ! どうしてこうなった! なんでイーターなんて化け物が! 神を恨むぞ!」


雄大がそう言って、私は何か引っ掛かる物を感じた。


その場に足を止めて、記憶を遡るように額に手を当てる。


「おいおい、どうしたんだよ芹川。ほら、さっさと行かねぇと、どんどんイーターが集まってくるぜ?」


「ちょっと……待って。神……神様?」


こんな時だけど、もう少しで考えがまとまりそう。


「なんだ? 神頼みでもするつもりか? 頼みを聞いてくれるような神様なら、俺達をこんな目に合わせないだろ」


「俺もそう思うぜ。神なんていねぇ。神は死んだ! ってどっかで聞いたことあんな。なんだったっけ?」


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