屍病
その時だった。


ドスッという音が聞こえ、雄大が床に倒れ込んだのだ。


「ぐはっ!?」


「ちょっと頭を冷やしたらどう? 風雪を餌にすれば逃げられるかもしれないけどさ。雄大がそんな提案をするなんて、らしくないよ」


真倫ちゃんが大河くんを振り解き、今にも包丁を振り下ろそうとした雄大の脇腹に蹴りを入れていた。


「し、信じられない! 竜也の次は私!? ふざけないでよ! こんなやつと一緒にいたくない! こいつを餌にしようよ!」


今度は雄大をターゲットに。


そんな風雪の前に歩み寄り、手を振り上げる真倫ちゃん。


そして、強烈な平手が風雪の頬を捉えた。


パンッと、弾けるような音が聞こえた。


「あんたも誰を餌にするとか言わないでよ。廊下にはイーターがいて、私達はこの部屋に追い詰められてる。逃げるなら誰も死なずに逃げようよ。私が言えた義理じゃないかもしれないけど。もう、誰かが死ぬのなんて見たくないよ」


頬に手を当てて、真倫ちゃんを睨み付けていた風雪も、その言葉には何も反論出来ずに。


ただ、俯いていた。


「雄大もだよ! ここから逃げるなら、全員で逃げる方法を考えてよ!」

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