屍病
追い詰められたこの状況。


そして、お互いがお互いを憎しみ合う中で、邪魔者を排除しようとするのは必然なのかもしれない。


協力なんて出来ないかもしれない。


ここから逃げ出すなんて出来ないかもしれないのに、真倫ちゃんの提案は、甘いとも思える。


それでも私は……真倫ちゃんの提案が間違っているとは思えなかった。


「……す、すまない。カッとなると周りが見えなくなって。だけどどうする。この数のイーターから逃げるなんて不可能に近いぞ」


包丁を床に置き、その場にあぐらをかいて首を横に振った雄大。


「私は……謝らないから。綺麗事を並べても、あんたらが竜也を殺した事実は変わらないんだから」


風雪は相変わらずというか。


それでも、真倫ちゃんが言いたいことはわかってくれたのか、それ以上文句を言うことはなかった。


「真倫ちゃん……かっこよかったよ」


ふたりから離れて、私の方に歩いて来た真倫ちゃんに、私はそう呟いた。


「はは……愛莉にいいとこ見せたくて、ちょっと頑張っちゃった。こんな状況では、何が正しいかなんてわからないけどさ」


「うん。私ももう、何がなんだかわからないよ。雄大の気持ちもわかるけど、風雪さんの気持ちもわからなくはないんだ」
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