屍病
「あ、あの……ちょっといい?」


本当はこの人達とは話もしたくないけど、そうも言っていられない。


「なによ。くだらないことだったら殺すから」


高下のその言葉に、ビクッと身体が萎縮する。


「そんなことをしたら、私が黙ってないぞ、高下」


そんな私を庇うように、真倫ちゃんが高下を睨み付けた。


「ふん。早く言えば?」


「う、うん。不思議じゃない? あんなに大きな地震があったのに、あそこにある今にも潰れそうな小屋でさえ潰れてない。どこにも、地震の影響なんてないように見えるんだけど」


突如現れた灰色の人喰いから逃げるのに必死で、立ち止まってみるまでそれに気付かなかったけれど。


どうやら、皆も気付いてなかったみたいで、辺りを見回し始めた。


「確かに……余震もないようだし、被害が全くないなんておかしいわね。あれだけ大きな地震だったのに」


茂手木が、不思議そうに辺りを見回してそう呟いた。


「んなことどうでもいいぜ! 早く帰ろう! 帰って、神社に化け物が出たって家の電話で警察に言えば良いだろ!」


「そう……ね。だけど、あの化け物はどこかから湧いたものなの? 葵ちゃんはわかっているはずよね? 葵ちゃんのおじいちゃんが、灰色の化け物になっていたことを」
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