屍病
「い、いやいやいや! 冗談じゃないぜ! あの数のイーターを殺れるなら、とっくに殺ってるっての! 俺は正義のヒーローでもなんでもないんだからな!」


「そうじゃないって! 少しでもいいから、イーター達をここから引き離してくれないかって言ってるの! 戦わなくても、逃げることなら出来るでしょ!?」


真倫ちゃんがそう言うと、桐山は少し黙って。


その間、ドアを引っ掻く音と、イーター達の声がずっと聞こえていた。


「ど、どうにかならないのか! このドアももうそんなには持たないぞ!」


音楽室のドアは外開きだから、押されている限りは開くことはないと思う。


でも、破壊されたら話は別だ。


今、心配なのは破壊の方で、こればかりは押さえているからどうにかなるものではない。


一刻も早く、この状況から脱する必要があるのに。


「桐山くん! お願い!」


祈るように、私がそう言った直後。


「わ、わかった。でも、逃げるだけだからな! どれだけイーターを離せるかもわからねぇ! それでもいいならやってやる!」


これは賭けだ。


桐山を追い掛けて、イーター達が行ってくれれば私達は容易に脱出出来るだろうけど。


もしも大半のイーター達がここに残れば、私達の状況は変わらないのだから。
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