屍病
「くっ! 早く……早くしてくれ桐山!」


そう、雄大が叫んだ時だった。


バリバリッと、ドアの四箇所からイーター達の手が飛び出して、私達を掴むように手が襲いかかったのだ。


「う、うわあああああああっ!」


「い、いやあああああああっ!!」


それを振り払うように身体を捻り、私は床に倒れ込んだ。


真倫もなんとか振り払ったけれど、雄大はというと……。


「あがっ! ぐっ……」


指がおかしな方向に曲がっていながらも、イーターの手は雄大の首を掴んでいたのだ。


人の四肢を、腹を引き裂く程の力を持つイーター。


そんな力で絞められたら、あっという間に殺されてしまう!


突然のことで、雄大の手から床に落下した包丁。


私がそれを掴んだのは、助けないといけないなんて考えていたからじゃない。


迷ったら殺される。


茂手木の時だって、高下の時だって。


すぐに動いていれば、結果は変わったのかななんて後悔があったから。


怖いと感じるよりも先に、身体が動いた。


雄大の首を絞めている手に、立ち上がって包丁を振り下ろす。


ゴリッと骨に当たる感触があったけれど、さらに力を込めて。


驚いたように手を広げたイーター。


雄大は拘束を解かれ、ドアから離れた。
< 156 / 238 >

この作品をシェア

pagetop