屍病
「あアッ! 目玉ガッ! せっカクの若い男ノ目玉が!」


「ひいっ!」


私の頭に落ちたのはこれだったの!?


イーターのよだれで濡れている眼球を見ながら、私は小さな悲鳴を上げた。


私でこれだから、風雪は机から手を離して逃げかねない!


そう思って上を見てみると……。








「若い……男? もしかして竜也なの?」








風雪は真顔でイーターを見詰めて、そんな質問をイーターにしていた。


「落ちテ来タ男は美味カッタ美味カッた! 私は目ガ好キなンダヨォ!」


ドアをガタガタと震わせて、イーターが笑いながら喋る。


必死に押さえなきゃと思うものの、イーターが喋る度によだれが落ちて来るのがたまらなく嫌だ!


「やっぱり……竜也なんだね。テメェは! 竜也を食ったやつなんだな! ふざけんな!」


机を押さえたまま雄大の手から包丁を取り、ドアを突き破ったイーターの顔に目掛けて、風雪が包丁を突き立てた。


「アひっ……」


包丁が刺さる音と共に、そんな空気が抜けるような音が聞こえて。


「死ね! 死ね! 竜也の苦しみを……思い知れっ!」


狂ったように風雪は、何度も何度もイーターに包丁を突き立てたのだ。
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