屍病
「だったら、誰が殺る? 机を押さえている人も必要だぞ」


床に横たわる包丁を見て、雄大が尋ねた。


あの怒り方を見たら、危険だけど風雪にやってもらうのが良いかと思うけど、あれから山中の目玉を持ったまま俯いている。


もう一度怒れと言っても、そんなに都合よく怒れないだろうなというのは見ただけでわかる。


今は、失意の底にいるのだろうから。


「……私がやるよ。穴は私が押さえてる机のところだし。それに、愛莉にいいとこ見せたいからね」


「お前はそればかりだな。でも、山瀬らしいか。よし、任せたぞ」


雄大がそう言うと、真倫ちゃんは小さく頷いて。


床の包丁を拾い上げた私は、真倫ちゃんに手渡した。


「真倫ちゃん、頑張ってね」


「任せなよ。全員ぶっ殺して、ここから出るんだ」


一番上の机が外される。


ドアを押さえる机に、さらに身体を押し付けるようにして力を込めた。


これが失敗すれば、私達はイーターに殺される。


上手く行くと祈るしか……真倫ちゃんに頼るしかもう方法がない。


真倫ちゃんが包丁を構えて、イーターが頭を出すのを待つ。


「よしっ! ほら、いつでも来てみなよ!」
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