屍病
暗くて奥までは見えないけど、確かにあれだけ群がっていたイーター達の姿がない。


入り口に、風雪が殺したイーターの首なし死体があるけれど、それだけだ。


「イーター達も諦めたか。俺達の粘り勝ちってところかな」


「何にしても助かったよ。喉がカラカラだし、何も食べられなかったからお腹も減ってるしさ」


この状況に安堵したのか、真倫ちゃんも雄大も床に腰を下ろして笑顔を見せる。


だけど……廊下を見ていた私の目は、廊下の奥からこちらに向かって歩いてくる何かを捉えていた。


「え……ちょっと待って。誰かが来る!」


私がそう言うと、ふたりの顔が引き攣る。


この状況でここにやって来る人なんて、イーターくらいしかいないのだから。


雄大は慌てて机を背中で押し、真倫ちゃんは立ち上がって包丁を構える。


私も穴から離れて、背中で机を押した。


そして、ドアが微かに揺れる。


頭上でゴソゴソと何かが蠢いて……穴から、顔が出された。


「死ねっ!」


真倫ちゃん包丁を振り下ろそうとした時。


「え? お、おわわわっ! ストップ! ストップ!」


……今の声?


もしかして桐山?


その声に驚き、真倫ちゃんが慌てて包丁を止めようとしたけど、ゴスッという音と共に机に刺さり、動きを止めた。
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