屍病
一旦、皆と別れて、私と真倫ちゃんは家に向かって歩いていた。


ただ外を歩いているだけで不安になる、真っ暗な空。


不自然な暗さに、怖くなって真倫ちゃんの腕に手を回した。


「愛莉、どうしたの? 大丈夫だよ。きっと愛莉の家族は大丈夫」


私と手を繋ぎ、ギュッと握ってくれる真倫ちゃん。


大丈夫だと信じたい。


そもそも、神社で起こったあの出来事が異常すぎただけで、遠く離れた私の家にまで及んでいるなんて考えたくはない。


そんなことを言い出したら、日本中……いや、世界中そうなっていてもおかしくないんだから。


それ以降、何も話さずに家までやって来た。


不安に押し潰されそうになって、話どころではなかったというのが実際のところだ。


「じゃあ……ちょっと見てくるね」


私がそう言うと、真倫ちゃんは小さく頷いて。


それを見た私は深呼吸をひとつ、家の玄関を開けた。


「ただいま……」


家族の安否を確認しに来たのに、聞こえないような小さな声。


家に入ってすぐにある台所の引き戸をゆっくりと開けると……ママがこちらに背を向けて、鼻歌を歌いながら料理をしているようだった。


テーブルには料理が並んでいて、いつもと変わらない様子に私はホッと胸を撫で下ろした。
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