屍病
この町を出る……か。


電車が動いてなくて、外にはイーター。


移動の手段がない私達にとって、その考えはなかったな。


いや、あったかもしれないけど、イーターに食べられる恐怖と、もしも世界中がこんな状態になっていたらという不安で、動けなかっただけかもしれない。


「どうやって町を出るんだよ。竜也のバイクはキーがないし、兄貴の車だってこの前当て逃げされて修理中なんだろ?」


あ、そうか。


春瑠さんは19歳って言ってたから、運転免許持ってるんだ。


でも、車は修理中か。


「ぐっ……み、未来さんは車を持ってないんですか?」


「ごめんなさい。免許は取ったんですけど、まだ車がないんですよ」


車がないとなると、やっぱり歩いてになるのかな。


大河くんもいるし、あまり長距離を歩くのは厳しいと思うけど。


「まあ、それくらいどうにかなるんじゃねーの? なかったら適当に盗めば良いんだよ」


桐山が言うように、民家の車庫に車はあるけど、キーはきっと家の中にあるから、それを取るだけでも危険が生じる。


探している最中に襲われる……なんて、ありそうな話だ。


「移動手段は後で考えようか。とりあえず今は、神岩様のところに向かおう」
< 175 / 238 >

この作品をシェア

pagetop