屍病
山道の方を歩いて、神社の方を見る。


丁度石段の下、鳥居と社殿の間にある参道には、礼服を着たイーター達がうろついていた。


あれは……高下のおじいちゃんと、一緒にいた人達?


あれからどれだけ経ったかわからないけど、ずっとこの場所にいるのかな。


「イーターになっても、記憶を完全に失うわけじゃないみたいだからな。あのイーター達も、『神事を行わなければならない』という記憶が残っているから、ここから出られないんじゃないのか?」


お母さんもお父さんも、私や結夢を忘れたわけじゃなかった。


だけど、食べ物として見ていて……。


「そうかもしれねぇな。けっ! あいつらが神事を一日遅らせたせいで、俺達は大迷惑だぜ! まったく」


何事もなければ、こんなことを言われずに済んだだろうに。


桐山が言うように、あの人達が……高下のおじいちゃんが遅らせた張本人なら、恨みもする。


今、文句を言っても意味はないだろうけど。


「とにかく先に進もう。神岩様の怒りだと言うなら、怒りを鎮めさえすればどうにかなるはずだろ?」


雄大に促されて、私達は山道をさらに奥へと入って行った。


真っ暗で……シンと静まり返った道を。
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