屍病
でも、なんだか臭うな。


料理のにおいと、不快なにおいが混じって、気持ち悪い感じがする。


いや、今はそんなことはどうでもいい。


「ママ……良かった。無事だったんだね」


「愛莉? もう帰って来たの? 丁度良かったわ。お母さんね、いいお肉が手に入ったから、頑張って作ってみたの。あなたも一緒に食べなさい」


安心した私が、台所に入ろうとした時だった。


ママが大きな皿を持ち、私の方に振り返ったのだ。






「ホら。結愛ちゃんのあんかけ。とっテもおいシソうでしょ?」






大皿に乗せられていたのは……眼球がくり抜かれた妹、結愛の頭だった。


髪はべっとりと濡れ、苦しそうな表情のまま固まったそれを見た瞬間、凄まじい恐怖と絶望感が私を叩きのめした。


そして、背後から私は肩を掴まれて。


「おやオヤ。もう帰っテ来たのかい? 愛莉も美味しソウだね」


パパ……が、大きな口からヨダレを垂らして、私の背後に立っていたのだ。


「ひ、ひっ!!」


そう、私が小さな悲鳴を上げた瞬間。




「愛莉を……離せっ!」




真倫ちゃんの声が聞こえて、ガンッという音と共に、背後のパパが廊下に倒れたのがわかった。


「早く! 早く逃げよう!!」


その声の直後、私は真倫ちゃんに腕を掴まれて、台所から出て、家から逃げ出した。
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