屍病
「わわ! 足元が見えない! 段差とかやめてよ!」


「風雪、うるさいぞ。静かにしろ」


また兄妹の口論が始まりそうだけど、風雪の言う通り、暗すぎてどこを歩いているのかさえわからない状況だ。


木の根っこに足を引っ掛けて転びそうになったり、蜘蛛の巣に驚いたり。


こんな調子じゃ、いつ神岩様に到着するのかわからない。


「ふふふ……これは俺の出番かな。見ろよこれを! こんなこともあろうかと、ホームセンターで取ってきたんだぜ!」


困り果てている私達の一番後ろで、桐山が勝ち誇ったように声を上げた。


その手に握られた物から、眩しい光が照射される。


「き、桐山……お前」


「褒め称えてくれていいんだぜ! さあ、どうしたほらほら!」


皆、驚いたように桐山を見ている。


当然、私も驚いたけど。


それ以上に言いたいことがあった。


「バカ! そんなもん持ってるなら、一番後ろじゃなくて先頭を歩けよ!」


「まったくだ! どうしてお前はそうズレてるんだ!」


真倫ちゃんや雄大が、容赦なく桐山を罵る。


「え、えぇ!? ここは俺に感謝するところじゃないの!?」
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