屍病
少し歩いて、私達はとうとうその場所へとやって来た。


神様が宿っているという巨岩。


私の家ほどもある大きさの、苔むした神秘的な岩だ。


「え? あれ? もしかしてこれ? なんだよ……山と区別が付かなかったぜ。で、これをどうするってんだ?」


桐山が言うように、確かにパッと見は山と区別が付かない。


私も、以前に見ていなければ見逃すところだ。


「ん……皆、あれ見て。神岩様が……割れてる」


真倫ちゃんが神岩様を指さした場所。


確かにそこには、真新しい巨大な亀裂が。


神岩様を真っ二つに裂くような、裂け目が出来ていたのだ。


「しめ縄も……神岩様が割れたせいか千切れているな。神岩様が割れたからか、それともこんな世界になったからかはわからないが……」


そう呟いた雄大が、悲しげに俯く。


「僕達残された人間には……何も出来ることなんてないって言うことか」


雄大に続いて、春瑠さんまで諦めたように。


どうして皆、そんな簡単に諦めるの?


やっとの思いでここまで来たっていうのに。


私は雄大や春瑠さんみたいに頭は良くないかもしれないけど、諦める為にここに来たんじゃないよ。
< 182 / 238 >

この作品をシェア

pagetop