屍病
春瑠さんの言葉に、誰もが諦めたように俯いた。


ここまで来たのに、何もしないで帰るなんて嫌だと、口に出したものの……それが不可能なことだと私でも理解出来る。


「な、なんだよ。神岩様を戻せば良いんだろ? 小さいのもいるけど、8人もいるんだ。岩のひとつやふたつ、簡単に持ち上げられるだろ!」


こんな時、底なしのバカ……いや、底なしに明るい桐山には救われる。


だけど、今回ばかりは無理だよ。


「えっとね、この岩の種類はわからないけど、これだけ大きな岩なんだよ? 少なくとも数千トンはあると思うんだ。桐山くん……動かせると思う?」


優しい未来さんの話し方も、こんな時には残酷だ。


冷静に、誰にでもわかるように無理だと告げているのだから。


「す、数千……こ、根性とか気合いでどうにかなる重さじゃない……か」


「お前に一番ない言葉だな、根性とか気合いなんて」


「う、うるせぇよ海原!」


神岩様か。


ここに来れば、きっとこのおかしな世界もどうにかなると思ったんだけどなぁ。


上手くいかないもんだよね。


もう、この世界で生きるしかないのかな。


神岩様の声が聞こえても、私達にはどうすることも出来ないよ。
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