屍病
しばらく、その場で私達は考え込んでいた。


誰も話さなかったから、何を考えているかはわからないけど、きっと私と同じことを考えていたと思う。


神岩様の声ももう聞こえなくなって。


私達に残された道は、この世界で生きることしか考えられなくなっていた。


「やっぱり、こうなってしまったら、この町から出るしかないな。危険だけど、どこかの民家から車を拝借してさ」


そんな中で、春瑠さんが私達を元気付けるように口を開いた。


「う、うん。そうだね。まだ終わりじゃないよ。皆で一緒にこの町から逃げよう。この町で生き残った私達なら、きっとどこの町に行っても大丈夫だよ」


相変わらず未来さんは、落ち込んでいる私達を明るくしてくれる。


優しさが、声から滲み出ているような感じがするよ。


「お、おう……こんな町にいたって、いつイーターに食われるかビクビクして過ごさなきゃならないもんな。喜べよ大河! この町から出られるんだぞ!」


ぐしゃぐしゃと、大河くんの頭を撫で回して笑顔になる桐山。


「痛い、痛いって桐山!」


迷惑そうに、大河くんがその手を振り払う。


「俺達にはまだ、逃げるという選択肢があったな。この町に、もう何も希望が持てないなら、そうするべきか」
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