屍病
あまりにも酷い現実。


怖くてつらくて、脚が震えて走るのもやっとといった中で、川沿いの道まで戻って来た。


「これは……私の家もダメそうだね。愛莉、大丈夫?」


何がなんだかわからない。


妹の結愛がママに殺されて……料理にされてしまうなんて。


これは本当に現実なの?


夢でも見てるんじゃないの?


「ぜ、全然大丈夫じゃないよ! なんで結愛が……結愛が殺されて、料理にされちゃったよ!」


泣きながら、そう言った私の言葉は、どれだけ悲痛だったのか。


真倫ちゃんも、何も言わずに背中を撫でてくれるだけ。


あの時、真倫ちゃんがいなかったら私も結愛みたいになっていたかもしれない。


手に持っている、うちにあったバット。


それでパパ……だった化け物を殴ってくれたんだ。


しばらく泣いて、私が涙を拭ったところで、真倫ちゃんがポツリと呟いた。


「つらいと思うけど、学校に行こう」


もう動きたくない。


いじめられて、自殺しようとしたけどできなくて。


真倫ちゃんに誘われて祭りに行ったら、家族は怪物になって、結愛は料理にされてしまった。


あの時、私が死んでいれば、こんな酷い現実を見なくても済んだのかな?


どうすればいいかなんて、私にはわからなかった。


真倫ちゃんの言葉に答えず、ただ立ち尽くしていると……私達を照らすように、光が向けられた。
< 19 / 238 >

この作品をシェア

pagetop