屍病




「ああああああああぁぁぁっ! 痛い! 痛いよ! お姉ちゃん! 助けて、助けてよ! 足が……足がああああああああぁぁぁっ! 愛莉お姉ちゃん! 真倫お姉ちゃん! 桐山ああっ! 誰か……誰か助けてよおおおおっ!」







山の上の方で、大河くんの悲鳴が聞こえる。


私は……しっかり手を握っていたと思ったのに、怪物の手を避けた時に。


あの時に大河くんの腕を切断されてしまったんだ。


それに気付かずに私は。


「ち、ちくしょう……海原に大河まで。皆死にすぎだぜ……なんで死ななきゃならねぇんだ!」


「……わ、私、大河くんを助けてくる! 皆は先に逃げてて!」


桐山が叫んだ後、私はそう呟いて山道を再び登り始めた。


「待ちなさい愛莉ちゃん! もう……助からない。私達は逃げるのよ! 逃げるしか方法がないの!」


未来さんの言葉は優しいはずなのに、やけに冷たく感じるよ。


「で、でも! 大河くんはまだ小さくて! 見殺しなんて出来ないよ!」


「愛莉! 愛莉! 私達じゃ、大河を助けられないんだよ! どうやって……どうやって大河の怪我を治してあげられるんだ!? 無理なんだよ! 逃げるしかないんだ!」


真倫ちゃんの必死の訴えに、私はもうどうすればいいかわからずに。


山を下りるしかなかった。
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