屍病
「愛莉お姉ちゃん! 痛いよ! 助けてよお姉ちゃん! 死にたくない! 食べられたくないよ! 真倫お姉ちゃん! おね……」
悲痛な大河くんの叫びを、耳を塞いで聞かないように走る。
ごめんね、ごめんねと、何度も心の中で呟いて。
やっとの思いで、神社まで戻って来た私達を、さらに驚愕させる光景が待っていた。
石段の下でウロウロしていた人達。
その中のひとりが、神主と同じような怪物に変貌していたのだ。
そして……その怪物はイーターを捕まえて、頭部を噛み砕き、脳を舌でこそぎ取るように食べていた。
「な、なんだよあいつら。怪物がイーターを食ってやがる。うぷっ……なんだか気持ち悪くなってきた……」
「あ、あんな怪物、もう僕達ではどうにもならない。早く逃げよう。桐山くん、動けるか?」
今にも吐きそうな桐山の背中を摩り、春瑠さんが尋ねる。
「な、なんとか大丈夫っす」
そして再び走り出す。
どこかで車を調達する……といっても、あんな怪物が近くにいるんじゃ、この辺りでゆっくりもしていられない。
「くっ……すぐにエンジンがかけられて、すぐに動かせる車があれば良いんだけど」
「車……あっ! そうだよ! 学校にあったよ車! 杉山先生の車が!」
踏切に向かって走っている最中、真倫ちゃんが思い出したかのように春瑠さんにそう言った。