屍病
そうだ。


杉山先生は矢島さんと密会をする為に保健室を使っていて……キーも職員室の机の上に置かれてた!


「う、うん! 机の上にキーがあったよ!」


「よ、よし。運が向いてきたぞ。こんな不幸の真っ只中にいても、幸運はあるもんだな」


そうとわかると、私達に迷いはなかった。


学校に向かって必死に走って、到着した頃には皆汗だくになっていた。


幸い、イーター達の姿は見えない。


駐車場に停められているワンボックカーに移動し、真倫ちゃんが車のキーを取りに校舎の中に入って行った。


「やっと……と言った感じだな。雄大くんに大河くん……犠牲は大きかった」


「そうだぜ! 海原はなんかちょっとズレててよ、正直絡みにくかったけど……必死に頑張っててよ。大河だって、生意気だったけど、小さな赤ん坊を助けるために命張ってたんだよ……なのに俺は! 逃げてばっかりでよ! なんで俺みたいなのが生き残っちまうんだよ」


悔しそうに車を叩いて、泣いているようにも見える。


あの怪物から逃げるのに必死で、悲しむ暇もなかったけれど……ふたりがいないという現実が今、悲しみとして私を襲う。


桐山を見てではないけれど、私の目から涙が零れ落ちた。
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