屍病
その神岩様が割れてしまったから、もう「オリョウ」を鎮められない。


仮に元通りに戻すことが出来たとしても、再び「オリョウ」を鎮められるかはわからないのだから。


「そうだね。おかしな世界に迷い込んでしまったわけではなくて、ここが、僕達が生きていた世界なんだよ、きっと」


そうだとわかっていても、言葉にしてしまうと寂しさを感じてしまう。


「お。真倫ちゃんが戻って来たな。ほら、出発するぞ」


車のキーを持って帰ってきた真倫ちゃん。


それを春瑠さんに手渡して、車のドアを開けて。


私達は杉山先生の車に乗り込んだ。


学校の椅子とも床とも違う、座り心地の良いシート。


運転席には春瑠さん、助手席に未来さんが乗って。


二列目には私と真倫ちゃん。


三列目に桐山と風雪が乗った。


車が動き出して、ここ数日で一番の安心感が私を襲う。


「これで……この町から逃げられるんだね。私達の中学校。色んなことがあったな」


窓の外の中学校を見て、そう呟いたけど、私はハッと口を手で塞いだ。


「……別にいいよ。竜也のことでしょ? 私さ、考えてたんだよね。竜也が死んだ時……あんたみたいに、自分がどうなっても助けたかったのかってさ」
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