屍病
風雪が、少し寂しそうに話し始めたのを、私達は黙って聞いた。


この人が自分のことを語るなんてなかったから。


いつも文句ばかりで、私達に迷惑を掛けていた。


雄大なんて、頭にきて殺そうとまでしたくらいだから。


「でもさ、私は……怒って泣いて、その場から動こうともしなかった。竜也のことは好きだったけど、多分、あいつが強い不良だから好きなだけだったんだろうな。中学生の女子にビビった時は、情けないとか思っちゃったし。今になって思えば、竜也がいたら今頃、私達は皆イーターに食われてたかもしれないね。もう、私はどういう感情を持てばいいかわからないよ」


風雪も、ずっと悩んでいたのかな。


朱に染まれば赤くなる……なんて言葉があるように、付き合う人によって自分もその色に染められてしまう。


桐山だって、高下が私をいじめていたから、一緒になってやっていたわけだし。


まあ、だからといって、私は全ての行いを許せるような聖人ではない。


考えないようには出来ると思うけど。


「……やっとわかったのか。頭の悪い妹を持つと苦労するよ、まったく」


聞こえていたのか、春瑠さんが呆れたように首を横に振った。


春瑠さんは皆には優しいのに、風雪には厳しいんだよね。
< 197 / 238 >

この作品をシェア

pagetop