屍病
そんな話をしている間にも、車は国道に入って隣町に向かって走る。


田舎の夜だから……というのもあるだろうけど、車の通りがまったくない。


まあ、自転車に乗ってるイーターは見たことあるけれど、車では人を食うには小回りがきかないからなのかな?


なんて考えながら。


「この町って、こんなに静かで暗かったんだね。街灯はあるけど、それでも暗い」


海と山に囲まれた町。


それが私達が生まれ育ったこの町だ。


そんな町を、私達は逃げる為に捨てようとしている。


家族はいる……だけどイーターとして。


人間の私が家に戻れば両親に食べられてしまうだろう。


生きたいと願った人が生き残ったわけでも、生きるべき人が生き残ったわけでもない。


私達が生き残ったのは、ただ運が良かっただけだ。


「はぁ……お腹空いたな。あの日から、お弁当を一度食べただけだからさ。後は水道水くらいか」


そう言うと同時に、真倫ちゃんのお腹がグウと鳴る。


「俺はゆっくり寝たいぜ。シャワーを浴びてよ、この臭い服も洗濯しねぇと。何日着続けたんだよ。すっぺぇにおいがするぜ」


桐山が自分の服のにおいを嗅いで、顔をしかめる。


そんなこと言われると……私もにおいが気になってしまうよ。


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