屍病
車はいよいよ、この町の端にある駅を通り過ぎた。


後10分も走れば隣町に入る。


こうなってくると、私達の期待はどんどん高まってくる。


それと同時に感じる不安。


「ん? どうしたの? さっきから外ばかり気にして。真っ暗な山を見て楽しい?」


後ろから風雪の声が聞こえて、私はビクッと身体を震わせた。


「そ、そういうわけじゃ……ちょっとおかしいなって」


「おかしい? おかしいことなんていっぱいあったでしょ。何がおかしいの」


「えっと……私達は隣町に逃げようとしてるじゃない? でも、隣町からは1台も車が来てないなって」


微かに感じた違和感。


だけどそれを感じていたのは私だけじゃなかったようで。


「……愛莉ちゃんも感じていたのか。俺も、それは不安に感じていたんだ。田舎の夜とはいえ、ここは国道だ。どうして対向車が1台もいないんだってね」


運転している春瑠さんもまた、その違和感に気付いていたようだ。


よく見れば、道の端に車が停まっているのがわかる。


きっとイーター達が、捕食の為に車を停車させたのだろう。


そう考えていた時だった。


「は、春瑠さん! 前! イーターがいるっ!」
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