屍病
さっきまで、ついさっきまでうるさいくらいに騒いでて、動いていた桐山が……動かない。


「桐山……嘘だろ。こんなにあっさりと……」


真倫ちゃんも信じられない様子で、倒れた桐山の前で膝をついて項垂れた。


私は……信じられなくて、カウンターを背にして呆然としているだけ。


騒がしくて、いつもすぐに逃げ出して。


でも、ムードメーカーというか、場を和ませてくれていた桐山が。


こんなにもあっさりと死んでしまうなんて。


「……行きましょう。危険は承知で来ていたはずよ。悲しいけど、ここにいても桐山くんの死を無駄にするだけ」


未来さんの言葉が、時々きつく聞こえる。


つい数時間前に出会ったばかりの未来さんにしてみたら、桐山が死んでもそこまで悲しくないのかもしれなけど。


世界がこう変わってしまってから、私や真倫ちゃんは桐山とずっと一緒にいた。


仲の良い友達……ではなかったけど、ここまで一緒に生き抜いてきた仲間だから。


悲しくないはずがなかった。


だけど、未来さんの言う通り、ここにずっといても危険なだけだ。


早く移動しなければならないというのはわかっていた。
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