屍病
「ここの引き戸には弱点があって、こうやって持ち上げると簡単に……ほら、外れた」
正面の生徒玄関や職員玄関は鍵が掛かっていたから、私達は学校の裏手に回った。
桐山が言うには一箇所、鍵が掛かっていても外れやすいドアがあるということでやって来たけど……本当に開いた。
「さすが桐山だな。悪いことはなんでも知ってる。それを勉強に活かせば、かなりいい成績になってただろうに」
懐中電灯でドアを照らしながら、雄大が皮肉を言うと、桐山は何故か嬉しそうに。
「そ、そうか? だったら勉強も頑張ってみようかな?」
「皮肉だ。そもそもこんな状況で勉強なんてしても、意味がないだろ」
そんな桐山をバッサリと斬り捨てて、雄大は校舎の中に入った。
「さて……とりあえず近くの教室に入ろう。何が起こっているか、これからどうするかを聞かせてもらいたいからな。桐山、ドアを直すのを忘れるな。ここから化け物が入って来ないように」
さすがは雄大と言うべきか。
あの桐山が何も言い返せないで、言うことを聞いている。
「愛莉、傷は大丈夫? 痛まない? 丁度手洗い場があるから顔、洗っておく?」
学校に入って少し落ち着いたのか、真倫ちゃんが石をぶつけられた怪我のことを心配してくれる。
「うん、ありがとう。まだ痛むけど……今はそんなことを言ってられる場合じゃないから」
そう言いながらも、顔は洗っておこうと、蛇口から水を出した。