屍病
階段を下りて踊り場。


そこから二階を見た私達は……押し寄せた大量のイーター達によって、未来さんと風雪が食われているのを目の当たりにした。


手を口の中に入れられ、声が出せないようで。


身体中を満遍なく食いちぎられてる。


あまりの苦痛で、焦点が定まらないのか、涙を流したその目がフラフラと私達の方を見ていた。


「も、もうここまで……」


「これじゃあ……逃げられない!」


目の前で、身体の肉を食いちぎられて行くふたりを見ながら、どうすることも出来ない私と真倫ちゃん。


そこに群がるイーターのひとりが、そんな私達を見付けてニタリと笑う。


「あ、愛莉! こっち!」


そして、三階に向かって走る。


でも、三階の廊下には出ずに、さらに上。


屋上へと向かって私達は走った。


鍵を開け、ドアを開けてふたりで外に飛び出した。


「はぁ……はぁ……ご、ごめんね、愛莉。もう、逃げられなくなっちゃった」


地上から随分離れて、このドアしか地上に続く道はない。


「もう……終わりなんだね」


ポツリとそう呟いて、私は柵まで歩いた。


諦めたくない、まだ死にたくないと思っていても、もう、一階への道は閉ざされたのだから。


私達の運命は、もう決まっていた。
< 230 / 238 >

この作品をシェア

pagetop