屍病
だけどそれは、決して夢なんかではなかった。


私が寝ているベッドが揺れ始めたのだ。


これは……もしかして、あの地震!?


全てが変わってしまった、あのイーターが溢れる世界になった時の。


そう言えば、私が自殺しようとしたのは6月20日。


本当ならこの日に神事を行わなければならないと言っていた。


まさか……。


そこまで考えた時、頭が割れるほどの激しい頭痛に襲われた。


「あ……ああっ!」


小さく、そう声を出す事しか出来なくて。


地震の揺れがおさまり、ママが慌てて部屋に戻って来る。


「愛莉ちゃん! 大丈夫!? ほら、先生が来て……」









私は思い出した。


あの神主さんが、なんて言っていたのかを。


『屠られる者、屠る者。永遠に、永遠に繰り返す』


そして、あの時はわからなかったその言葉の意味を。


廊下の方から……随分遠くから悲鳴のような声が聞こえる。


ママも先生と呼ばれた人も、驚いたように私を見ていて。


「あ、愛莉ちゃん?」









「見テ、まマ。私、元気にナッたヨ。お腹ガ空いタ。お肉ヲ食べサセテ」









私の記憶があったのは、口の中に血が広がる所までだった。


屠られる者、屠る者……これを永遠に繰り返しているのなら、これまでに何度、私は「私」の人生を送っているのだろう。


次に目が覚めた時、私はまた真倫ちゃんに会えるかな。
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