屍病
今度は高下が思い付いたようにそう言ったけれど、雄大の表情は変わらない。


「この町から出て、本当にそこは安全なのか? 隣町にはイーターがいないと言えるのか? 見たわけじゃないから何とも言えないけど……その為には外を歩かなければならないからな。相応の準備が必要になるだろうな」


「お、おいおい! 怖いこと言うんじゃねぇよ! この町から出てもイーターがいるかもしれないって!? そんなの……絶望じゃねぇかよ」


雄大のその言葉に、桐山が首を横に振りながら反論した。


その気持ちは痛いほどよくわかる。


どこまで行ってもイーターだらけで、世界中の大人達が変わってしまったなんて考えたくないに決まってる。


「俺だって信じたくはないさ! だけど、現にこうして信じられないことが起きてるんだ! 希望を持つのは構わないけど、都合のいい希望は持つんじゃない!」


雄大に一喝されて、桐山は半笑いのままで表情が固まってしまった。


都合のいい希望。


家に帰って、家族は大丈夫とか考えていたのも都合のいい希望だったのかな。


だったら、私達はどうやってこの絶望から抜け出せばいいんだろう。
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