屍病
「え、お、お祭り?」


今日、そんなものがあることすら忘れていたけど、夏の最初にお祭りがあって、昔は毎年行っていたような気がする。


「あら、いいじゃない。行ってらっしゃいよ。お小遣いあげるから、たまには部屋から出て遊んでらっしゃい」


ママも、私の後ろで嬉しそうな声でそう言った。


「最近、全然愛莉と遊んでないし、たまには私と遊ぼうよ」


真倫ちゃんは、昔と変わらずに私に優しく接してくれる。


酷いいじめを受けていることを、一時でも忘れさせてくれると、この短い会話でも感じることができたから。


「う、うん。わかった」


「やった! じゃあここで待ってるからさ、早く準備してきなよ」


私がそう言うと、真倫ちゃんは嬉しそうに声を上げて、玄関に座った。


友達と遊びに行くなんて、いつぶりだろう。


二年生になって、クラス替えがあってすぐに、いじめが始まったから。


たった二ヶ月ほどだけど、私が死を選ぶには十分なほどの時間だった。


「わ、わかった。待ってて!」


私は慌てて部屋に戻り、髪をとかして服を着替えて。


ママにお小遣いをもらって、真倫ちゃんとお祭りに行くことになった。
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