屍病
ここには私達以外に誰もいないはずなのに。


どうして電気が点いたの?


と、考える間もなく、廊下側の茂手木の背後。


磨りガラス越しに、黒い影が見えて。


「も、茂手木さん! 逃げて!」


私がそう叫ぶと同時に、背後の黒い影がガラスを突き破ったのだ。


「え?」


茂手木がその破壊音に驚き、身をすくめた瞬間。


頭部に食らいつく、大きな口と鋭い牙。









「ぎゃあああああああああああっ!!」










グジュッグジュッと音を立て、茂手木の頭部に噛み付いたのは……イーター!


どうして誰もいない学校にいるのかわからないまま、私はその光景をただ見ていることしか出来なかった。


「ああああああああぁぁぁ!! い、痛い痛いっ! 助けて! 助けてっ!」


何とか引き剥がそうと、茂手木はじたばたともがくけれど、深く食い込んだ牙は外れない。


「あ、あああ……も、茂手木……」


一番近くにいた桐山も、腰を抜かして床に座り込んで、身動きひとつ取ることが出来なかった。


誰もがその光景に恐怖し、動けないそんな中で。


たったひとり、真倫ちゃんがバットを振りかぶり、イーターの頭部目掛けてフルスイングしたのだ。
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