屍病
もう血も出てないし、触れば痛みはあるけど、触りさえしなければ痛みも感じないから。


「悪かったな。前田はどうか知らないけどよ、俺はそこまでするつもりはなかったんだ。ただ、親父が役場で働いててさ。高下に逆らうとクビにされるかもしれないから……」


皆、高下を恐れてる。


正確に言うと、高下のおじいちゃんなんだけど、その権力を振りかざしてやりたい放題やっている高下は、よりたちが悪い。


桐山は、根は悪い人ではないとわかってるつもりだけど……だからと言って、今までのことが全てチャラになるかと言われたらそうじゃないよね。


「別に、桐山くんがやったわけじゃないから」


「そ、そうか、そうだよな。なんか悪かったな、本当に」


こんなことになったから、今までのことは水に流して……なんて、思えるはずがない。


生きる為に協力はしなきゃならないけど、しこりは残ったまま。


私は何も変わらない。


これからの桐山の態度次第で、私がどう思うか変わる。


苦手意識は、そうそう拭えるものじゃないから。


「外は……静かだな。イーターがいるとは思えないくらいに」


「いつもと……変わらないように思えるね」


そんなぎこちない会話をして、生徒玄関と職員玄関を調べ終わった。
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