屍病
「ひっ! ひやぁああああああああっ!!」


途端に再び桐山の悲鳴。


私も腰を抜かして、その場に座り込んだ。


矢島さんの身体……股から胸にかけて、食いちぎられたような。


内臓は食われたのか、空洞になっていて、小ぶりな胸と、顔は無事で、桐山の方を向いていたのだ。


「イ、イーターに食べられたの? それにしては……」


「す、杉山が食ったんだろ! ここにいたのかよ。見ろよ、俺達がいた教室がここから丸見えだ。だから気付いたんだ」


混乱する中で、何とか色んな事を考えようとするけど、上手くまとまらない。


「と、とりあえずここを出よう。考えられることも考えられないよ」


「お、おう。賛成だぜ」


逃げるように電気を消して保健室を出た。


廊下に腰を下ろし、荒くなった呼吸を整える。


「ビ、ビビったぜ。まさか隣で矢島が死んでるなんてよ。可愛かったのに……」


「そ、それよりもおかしくなかった? あの死体」


「そりゃおかしいだろ! 人を食う化け物がいることが既におかしいっての!」


桐山の気持ちはわかるけど、私が言いたいのはそうじゃない。


それは今更言っても、何も変わらないのだから。
< 43 / 238 >

この作品をシェア

pagetop