屍病
私達が戸締りの確認を終わらせて教室に戻ると、茂手木の前でただ泣きじゃくっている高下の姿があった。


高下は茂手木を殺したのか、それとも……。


それを実行出来たのかどうか、尋ねる人はいない。





「あああぁぁぁっ! 唯乃! 私をひとりにしないでよ! 死なないでよ!」




こんなに泣く高下を今までに見たことがなかったから、誰も声を掛けられないでいたのだ。


でも、そんな中で確かに聞こえた声。


「葵……ひゃ……早く……苦ひ……」






茂手木は……まだ生きていた。


自分でやると言ったのに、高下は何もせずに茂手木の前でただ泣いていただけだったのだ。


「!? た、高下! 俺達がいない間、ずっと泣いていただけなのか!?」


その声に、思わず雄大が反応する。


「だって! だって仕方がないじゃない! 唯乃は私の友達で……死んでほしいわけがないじゃない!」


「馬鹿野郎! お前が泣いている間、茂手木はずっと苦しんでいたんだぞ! 治る見込みなんてない! お前はただ、無意味に茂手木が苦しむ時間を延ばしたに過ぎないんだ! お前の勝手な想いでな!」


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