屍病
友達に死んでほしくないという高下の気持ちはわかる。


雄大の言っていることもわかる。


でも、裏を返せば、どっちの言っていることもわからないんだ。


友達だからって、苦しんで殺してくれと懇願する人の願いを無視して、長く苦しみを味わわせるのはどうかと思う。


でも、苦しみを終わらせるために殺してあげよう……というのも、生死の権利を私達が握って良いのかと、考えさせられる。


どちらにしても、誰かが苦しむことになるこの問いに、正しい答えなんてあるのかな。


「……高下が出来ないなら、私がやるよ」


私の前にいた真倫ちゃんが、バットを握り締めて茂手木に近付いた。


「ダ、ダメ! 唯乃は誰にも殺させないから!」


当然、高下はその前に立ちはだかり、真倫ちゃんを止めようとする。


「わかってるだろ!? 茂手木はもう助からないんだ! こんな姿になって、苦しみながら死ぬのを待つしかないんだ! 苦しみを拭ってやろうと思わないのか!? あんたはそれでも友達なのか!」


「わからないよ! だってそんなこと、誰にも教えてもらってないから! だけど友達だから、離れたくないから! 苦しんでるのはわかってるけど生きてほしいの!」
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