屍病
「まあ待て、山瀬の言いたいこともわかるけど、法なんて物は秩序を守るために存在するものだ。今、俺達がいるここに秩序なんてありはしない。生きる為に食糧を盗んでも、それを裁く法律も、人も存在しないんだよ。食べなきゃ死ぬ。それだけなんだ」


「わかってるよ雄大、わかってる。でもさ、そうだと割り切っちゃうと、仲間内で揉め事が起こって、仮に殺したとしても……裁く人がいないから大丈夫ってことになるんじゃないのか?」


もしかして真倫ちゃんは、茂手木のことが引っ掛かってるのかな。


助からない、死ぬしかないとわかっていて、苦しまないように殺すというのは、それは本当に良いことなのか。


私達は……高下に、大切な友達を殺すという行為を押し付けただけなんじゃないかって。


その言葉から、そう感じ取ることができた。


「それは……その時の最善の行動を心掛けるようにしよう。何にせよ今は、食べ物がないと始まらない。今、我慢ができたとしても、絶対に何か食べないとダメなんだからな」


どんな話をしていても、結局はそこに行き着いてしまう。


生きる為には危険を冒して、食べ物を確保するしかないのだという結論に。
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