屍病
「は? 何言ってんの? こんな時に。怖くて頭がおかしくなっちゃった?」


本当に、頭がおかしくなったのかな。


高下が言うように、こんな時に聞くことじゃないのに。


これが火種になって、せっかく生き残った私達の間に修復できない溝ができたら、イーターだけではなく、仲間内にも敵を作ってしまうことになるのに。


「私は……一昨日、自殺しようとしたの。もうこれ以上苦しいことはないって思って。でも違った! 高下さんからいじめられるよりも苦しいことが待ってた! こんなことになって、大嫌いだった高下さんと一緒にいて! でも、色々考えるけど高下さんは頼りになるから! そんな人に、いつかまたいじめられるのかなと思ったら……」


自分でも、驚くほど思っていることが言える。


イーターの恐怖に比べたら、高下はただの人間で、恐ろしいことなんて何もないと思ったのかな。


高下は包丁を握ったまま、私の言葉を聞いている。


何を思ったのか、今何を考えているのかはわからない。


そんな中で、静かに口を開いた。


「ふーん、自殺しようとしたんだ? じゃあ、一度死んだようなもんだよね?」

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