屍病
「大丈夫? もう血も出てない?」


「うん、大丈夫。ごめんね」


近くの石段に腰を下ろし、真倫ちゃんに慰めてもらっていた。


家に帰って、この怪我をパパとママにどう説明したらいいんだろう。


いじめられてて、石を投げつけられた……なんて言ったら、どれだけ悲しむか。


真倫ちゃんとお祭りを楽しんで来なさいと送り出してくれたママにはとても言えない。


「まだあいつらがいるかもしれないから、別の道から帰ろうか。ほら、立って」


先に立ち上がった真倫ちゃんが、手を差し伸べてくれて、私は小さく頷いてその手に触れようとしたその時。







私達の運命を決める、アレがこの町を襲ったのだ。








グラグラと、不自然に揺れ始めた地面。


木は激しく揺れ、所々から叫びにも似た悲鳴が聞こえ始めた。


「わ、わわっ! お、大きい!」


「ま、真倫ちゃん!」


立っていられないのか、真倫が私に覆い被さるように倒れてきて、何とかそれを抱き留める。


この地震で、このまま死んでしまったらどうしよう……せっかく真倫ちゃんが励ましてくれたのにと、ギュッと真倫ちゃんを抱き締めて。


何分続いただろうか。


この揺れなら、家が倒壊していてもおかしくないと思いながら、揺れが小さくなったことに安心し始めた。
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