屍病
パンッ! と、派手な音を立てたけれど、真倫ちゃんは顔を少し横に向けただけで、身体は微動だにしなかった。


「じゃ、そんなわけでよ、俺達は保健室のベッドで寝るわ。化け物が来た時と、メシの時間には呼んでくれや」


「竜也、あいつらムカつくんだけど」


「気にすんな。マジで殺してぇと思ったら殺せばいいんだよ」


そんな話をしながら、ふたりは保健室の方に歩いて行った。


「くそっ! なんなんだあいつらは! こんな状況だってのに、協力しようともしない! 絶望的だな……これなら、俺達だけの方が良かった」


殴られた頬をさすりながら、雄大が立ち上がった。


イーターではないということは、高校生くらいだろうか。


不良っぽかったし、そんな人のパンチをまともに食らったんだから、そりゃあ痛いよね。


「ゆ、雄大も真倫ちゃんも大丈夫? どうしよう……あんな人達と一緒にいなきゃならないの?」


私をいじめていた高下や茂手木。


生きるために協力して、打ち解けることが出来たけど、あの人達は違う。


この状況下でも、平気で悪意を人に向けることが出来る、救いようのない人達なのだから。
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