屍病
「とにかく……今はやれることをやろう」


雄大の寂しそうな言葉。


私達は邪魔なイーターの死体を横に除け、下足箱を運んで何とか積み上げて、割れたガラスを塞いだ。


途中、あのふたりがベッドにある死体を片付けろと文句を言ってきたけど、私達は無視。


校長室に移動をしたようだ。


「ふぅ……これで当面は何とかなるのかな。早く音楽室に行かないとな」


「その前に、高下さんを運ばないと。こんなところに置きっぱなしは可哀想だよ。高下さんは……私達を守ってくれたんだから」


「そう……だな。でもどこに運ぶ? 保健室に運ぶか?」


冷たい床ではなくて、ベッドの上。


雄大なりに気を利かせてくれたのだろう。


だけどそこじゃない。


「1年3組の教室に。茂手木さんがいる場所に運ぼう」


せめて遺体くらいは、大切な友達だった茂手木と一緒に。


3人で高下の遺体を持ち上げて、1年3組まで運ぶ。


イーターに食われて頭部がなくなっていた茂手木の手と、高下の手を繋いで。


教室を出る際に、私は高下と茂手木が何も言わずに寄り添っている姿を見て、少し悲しくなった。


「高下さん、茂手木さん。私……ふたりの分まで生きる。絶対」
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