探偵I(タンテイアイ)【第2巻】
「紗永、他にやりたいことがあるって言い出して。秘書を辞めるって……」
「えっ、それが別れる理由な、……わけ?」
「ああ、うん」
「うん、って……。お前、本当にはっきり言うよな」
泰平が椋介の顔を見た。
「いいよな、女の子は──」
「何が、いいんだよ?」
「紗永にも、俺は言ったことがあるんだけどさ……」
「ん、なんだよ?お前は何を言ったんだ、紗永ちゃんに?」
「簡単に仕事が辞められていいよなー、ってこと──」
「お前、そんなことを言ったのか、紗永ちゃんに?」
「ああ。女の子は仕事を辞めて、結婚して、子供を産んで、気楽に主婦をしながら日常を送っていられるから、良いよなって言った……」