探偵I(タンテイアイ)【第2巻】
椋介が頬杖をついて頭を傾げる。
「ああ。ごめん、わっからねーわ。話を聞いていたら、紗永ちゃん、色々とお前に尽くしてくれていたじゃないか。秘書を辞めたぐらい、なんだよ。あんな良い子、今の時代に貴重で凄く珍しいんだぞ……」
「俺の彼女は、秘書じゃないと意味がないんだよ」
「どうしてなんだよ、お前?」
「俺って、背がすらりと高いし。自分で言うのもなんだけど……、まあ、わりとハンサムなメンズの方の部類に入るだろう?」
「まあ、俺よりは背が高いし、ハンサムだわな……」
「──だろう。んで、一流大学を卒業をして、いい会社に就職をして、俺の身に合った一流の彼女を作って。俺は完璧で、ここまでは全てトントン拍子だったわけ……」
「……はい、はい」
「で、同期の中でも俺は成績が一番良い。当然、周りにいる先輩からもちやほやと可愛がられる。こんな俺の近い将来はもう社長の道しかない。次期社長の座は俺にもう決まっているんだよ!なあ、椋介、お前もそう思わないか?」
「お前、そんな甘くねえぞー。会社に入ったばっかりのお前がそんなに早く社長にはなれるわけがないだろっ……。なんでもさ、まず順番ってもんがあるじゃん」
「……でも、途中で俺の予定が狂ったんだよ……。紗永が秘書を辞めた、秘書を……」
肩をがくっと落とす泰平。