探偵I(タンテイアイ)【第2巻】
「泰平に話をしたいことがあるから。お願い、電話を頂戴って……」
「──で、電話、かけたのか?」
泰平が目を瞑って顔を横に振る。
「どうして?」
「もう、別れたし。それにお互い違う道を歩んでいる。そういえば、同期の女の子が何人かずっと今も連絡をしているみたいだけど、全然繋がらないって言って困ってたな……」
「お前、全然心配じゃないないのか……?」
「何が、心配──?紗永のこと?」
「ああ、そうだよ!」
「全然、俺はしていないよ。だって、俺、紗永が秘書を辞めるって言い出した頃ぐらいに今の新しい彼女がすぐにできたしな。今の彼女、毎日こまめに連絡をしないと、俺捨てられそうで、まじっ怖いわっ……」
酒に酔い真っ赤な顔の泰平がジョッキを握ったまま声を出して笑う。