お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》
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「…で。見事にぶっ潰れたってわけよ」


電話で呼び出されたダンレッドの目に映ったのは、頬を染めてぐったりとロヴァに寄りかかるメルだった。

いつものスマートな執事モードからは想像もつかない相棒の姿に固まるダンレッド。

カッカ、と笑うロヴァも、上機嫌だ。


「こりゃあ、相当珍しい光景だぞ。こいつが“こんな”になるなんて、金輪際ないだろうな」

「で、でしょうね…」


ロヴァにぎこちなく答えたダンレッドは、未だに目の前の男がメルであるとは思えなかった。

ダンレッドはメルから着信が入り、いつものように反射的に電話に出たが、相手がロヴァだと知り、メルの交友関係に開いた口が塞がらないと同時に、憧れの存在を目の前にして動悸と興奮が止まらない。

数時間前に大ゲンカしたことなんて、すっかり頭から飛ぶほどの衝撃だ。

ダンレッドは、ロヴァにぺこぺこと挨拶をしながらメルの肩を揺する。


「め、メル…?わかるー?帰るよ?」


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